7月30日未明、Jリーグ清水エスパルスの監督であったアフシン・ゴトビ氏について、監督解任の報道があった。後任にはユース監督である大榎克己氏が就任するという。
本件について、各種ソーシャルネットやBLOGなどでサポータから様々な意見があり、私なり一度思いを整理しておきたいと思い記事にまとめたいと思う。
ゴトビ解任に伴う各サポーターの反応について
1:BLOG、まとめ関連
各BLOG主様の記事は一読させていただき、各記事ともに単純な思いを吐き散らしているというよりは冷静に分析し、ネガティブでもポジティブでもない、ニュートラルなよい記事が多かったと思います。
その中でもm_maruさんの「結局、清水の敵は清水だったってこと」では、コメント欄で多様な意見が飛び交い、熱を帯びています。その後のフォロー記事も丁寧に記載しており、煽りなどに決して乗らず、冷静なよい記事かと存じます。
・エスパルス遅報「LOCO!エスパルス(7月) 監督交代に関する選手のコメント」
・m_maruのエスパルス観戦日記「結局、「清水の敵は清水」だったってこと」
・フツーな主婦ゴトーのサッカーな部分「世界の片隅でゴトビ愛を叫ぶ」
・ワンランク上の僕になりたくて書いているブログ「ゴトビ監督解任と大榎新監督就任に思う」
2:Twitterまとめ
ツイート選定には困りました。単純な「さようなら」「ありがとう」系ツイートは除外して、冷静なコメントのツイートを選んだつもりです。ツイートを一通り見た中で、多いと感じたのは「ゴトビ感謝」のツイートです。反面、交代歓迎のツイートは内容が不適切な表現が多かったので、結果として掲載することは自粛しました。
もしもゴトビさんに託されていたのが、革命であるなら、それに敗れたのだ。エスパルスが変革を諦めた、必要としなくなった時点で、いる意味はない。そもそも外の人に変革を託したときに、結末は見えていたのかもしれない。というか、本当に巌さんは、革命を求めていたのかなぁ。この辺も分からない。
— おん (@Orange_papico) 2014, 8月 1
結局ゴトビが辞めた悲しさから他のものを批判したがり、ゴトビが辞めたことで今までのうっぷんをただ吐き出す奴も多数。。 俺から言わせれば「アンチ」とか「~派」とかいう奴ほど物事を俯瞰で見れてない一番の厄介者。盲目。批判も擁護も他人の意見を脳内で咀嚼して尊重してから意見を述べよう。
— zuccanimihara (@savethecat19) 2014, 7月 31
正直どっちもわかる気はする あえて言うならやっぱり3年やってて成績があんまり変わらんってのはがっかりするんじゃないの>ゴトビ
— しゅんちゃま (@Consaneko) 2014, 7月 29
ゴトビという人物は戦略家であって戦術家ではなく、若い選手が大半を占める今のエスパルスには選手個々のプレーの引き出しを増やしてくれるタイプの監督が必要だった。彼みたいなモチベーションや緊張感を与えるメンタル管理タイプは既に完成された選手が集まる代表監督向き。 #spulse
— sanokuni (@sanokuni) 2014, 7月 29
ゴトビ解任。本人が他チーム臨んだ事情などあるなら仕方ないし、チーム内で決定的な何かがあったのかもしれないが、おそらく降格への清水史上最大の危機になる可能性がある。それだけ薄い戦力でよく戦っていた。
— takataka123 (@takataka789) 2014, 7月 29
ゴトビさんにはオジー、ペリマン以来となる「プロ監督」という雰囲気があってエスパルスのいろいろな意味での弱さ・甘えを変えてくれるという期待があったので本当に残念。2010年終了してからの絶望のオフに希望を与えてくれ翌年のナビスコカップ決勝に連れて行ってくれた事に感謝。
— Palau(パラオ) (@palau_s) 2014, 7月 29
チームが空中分解していたってあるけどそれ以前にサポーターが空中分解してたんじゃないの? ゴトビ解任ってずっと掲示板やらなんやらで言っててさ、ゴトビ監督は良いよって言うとお前はゴトビ信者だとかアンチゴトビ派なんて言葉があったり…馬鹿馬鹿しい、腹立たしいぜ
— タカヒロ@takahiro (@rixyugen) 2014, 7月 29
2011年からスタートしたフロントとゴトビの構想というのは、リュングベリの獲得に代表されるように、清水独特の閉鎖体質を壊して、経済的にもアジアを中心に国際的に認知されるクラブに生まれ変わろうと。そのためにはACLの出場が不可欠だったが、結局一度も出られなかった。 #spulse
— sanokuni (@sanokuni) 2014, 7月 29
ゴトビの解任はあくまでもここまでのトータルな成績に対する結果責任とし、悪者扱いで切るような姿勢は内外に見せてはいけない。ましてや番記者が煽って選手からゴトビへの不満コメントを引き出すのは言語道断。
— すずぱる (@sspls) 2014, 7月 29
資金と戦力に問題抱える中、ゴトビはそうとう良くやっていたと思うのだけども、少なからぬ清水サポの方々は、そもそも当初から彼を嫌っていた模様。就任時に何かあったんだろうか。
— 五百蔵 容 (@500zoo) 2014, 7月 29
ゴトビ監督時代を間単に振り返る
1:ゴトビ監督リザルト
・2011年:J1リーグ:10位/ナビスコ杯:2回戦敗退/天皇杯:ベスト8
・2012年:J1リーグ:9位/ナビスコ杯:準優勝/天皇杯:4回戦敗退
・2013年:J1リーグ:9位/ナビスコ杯:予選リーグ敗退/天皇杯:4回戦敗退
・2014年:J1リーグ:12位/ナビスコ杯:予選リーグ敗退/天皇杯:3回戦進出
ゴトビ監督のリザルトは上記の通り。特徴としては年間通して安定した成績というよりは、よい時と悪いときがハッキリしており、その結果として中位につけたという結果となっています。また、ナビスコ杯については2012年にファイナル進出を果たしており、チーム伝統として得意としていた天皇杯については最高でベスト8までとなっています。
この結果を見て、サポーターとして様々な思いがあるとは思います。ただ、個人的にハッキリとしているのは「実力通りの順位、結果」だなということです。これも贔屓目かもしれません。他チームサポからみたら、「実力以上」という評価もあるかもしれません。
また、ゴトビ監督時代において「優勝を狙えるチーム」であったかといえば「NO」と答えるのが、正しい物の見方だと考えます。そのため多くのサポーターも「ACL出場」という、優勝は無理だけどせめて・・・という妥協的な目標が多かった気がします。
2:選手の出入りについて
これもゴトビ監督とは切っても切り離せないことでしょう。以下に簡単にまとめてみました。何度か出入りしている選手や、中途入団、退団もまとめているため多少わかりにくい点もあることはご了承ください。また、ゴトビ監督就任前の大量流出は除外しています。
2011年
I N:櫛引政敏、ヨンアピン、高木俊幸、樋口寛規、小林大悟、柴原誠、橘章斗、ユングベリ、アレックス、高原直泰
OUT:武田洋平
主力が大量流出し、厳しいシーズンとなりましたが、現在の主力となる櫛引、ヨンアピン(中途入団)、高木が加入しています。また、11~12シーズンの真のエースであった「アレックス」も加入しています。そのほかには、話題性抜群のユングベリと高原もこの年に加入しています。
2012年
I N:石毛秀樹、河井陽介、イ・キジェ、吉田豊、柏瀬暁、姜成浩、犬飼智也、八反田康平、白崎凌兵、瀬沼優司、林彰洋、三吉聖王、金賢聖、ジミー・フランサ
OUT:岡根直哉、枝村匠馬、岩下敬輔、太田宏介、児玉新、辻尾真二、ボスナー、小野伸二、山本真希、ユングベリ、アレックス、木島悠、ジミー・フランサ、永井雄一郎
ユングベリが帰国してまま戻らず始まったシーズンです。オフには太田の移籍騒動もありました。シーズン中にアレックスが中東に売られてしまい、チームは大混乱、ゴトビ戦術に沿わなかった枝村、岩下もチームもこの年にレンタル移籍でチームを離れてしまいます。更に、チームは深刻なFW不足と成り、ジミーフランサ、金、指定強化として瀬沼などを緊急補強しています。
2013年
I N:三浦弦太、廣井友信、藤田息吹、本田拓也、六平光成、村田和哉、高木純平、金子翔太、加賀美翔、三浦雄也、岡根直哉、イ・ミンス、内田健太、高原寿康、バレー
OUT:姜成浩、犬飼智也、白崎凌兵、碓井健平、林彰洋、山本海人、三吉聖王、小林大悟、柴原誠、金賢聖、高原直泰、バレー、ラドンチッチ
FW不足の反省から、数年越しといわれるラブコールを果たしてバレーを獲得。しかし戦術にフィットせず「戦術バレー」の試合でかろうじて勝つことになります。そんなバレーもシーズン中に電撃移籍され、急遽ラドンチッチを獲得します。その結果、両WGを活かしたサッカーが展開できるよう幸運もありました。またドイツから大前、鹿島から本田が戻ってきました。
2014年
I N:相澤貴志、高木和徹、ヤコビッチ、高木善朗、長沢駿、ノヴァコビッチ
OUT:岡根直哉、村松大輔、八反田康平、イ・ミンス、内田健太、瀬沼優司、樋口寛規、高原寿康、橘章斗、伊藤翔、ラドンチッチ
フィットしていたラドンチッチに関しては契約がまとまらずに破談。しかしノヴァコビッチの獲得に成功します。しかしトップ下としてやっと開眼した伊藤がシーズン直前に移籍してしまいます。
移籍概論
納得がいかない人たちのターニングポイントは2012年でしょう。小野、山本(真)、枝村、岩下がチームを去り、2013年には山本(海)、高原、林、小林がチームを去っています。その去ったメンバが実力的に劣っていたかといえば、山本(海)、山本(真)、林、岩下、枝村など、2014シーズン現在のJ1でも活躍している状態です。
ただ、彼らがチームにアンタッチャブルな存在だったかといえば、実力拮抗の選手も居る状況でしたので必ずしも絶対的確保すべき選手ではなかったという認識です。
また、清水エスパルスが2011年移籍ショックで失った求心力を取り戻すために、小野を中心として「静岡愛」戦略をとった経緯もあります。そのため静岡出身者、またはユース出身者が多くいる状況から、一気にそういったメンバが居なくなることに対して、アレルギー反応が出たサポーターの気持ちもまた理解できます。
最後に、期待の若手たちのレンタルも問題になりますが、個人的には現在のエスパルスはレンタル移籍を育成の場として捕らえているので、以前のような「レンタル=満了後移籍」といった安易な論法は当てはまらないと考えます。
まとめ
1:サポーターの温度について
私のスタンスとしては「優勝はかなり困難だろう」「ACL出場も厳しいだろう」「賞金圏内いけるかなぁ」「残留死守」となりますので、現状のエスパルスを拝見して「不甲斐ない」とは思いつつも、冷静に受け止めているという形でした。
今回、様々な記事などを拝見して思ったのは、想像以上に各サポーター同士の温度差が大きいと感じました。確かに熱い情熱なければ、毎回全国各地のアウェーまで応援なんていけません。そういった方たちとって、現状が許しがたい状況だったということも理解できます。
しかし、Jリーグも20年を超え、当時最前線で声をからして応援していた方も、40~50代になり最前線から一歩引いて応援する方も増えました。また、その間にJリーグというものが、常に全チームが優勝を狙って戦うのではなく、各チームの事情に合わせた成績、運営があるのだと、自分なりの咀嚼をされている方が増えてきた気がします。
是非、サポーターの方々には、そういったいろんな立場での応援の仕方がある点は相互に理解して認め合っていけたらと思います。どちらが良い悪いではないと思っています。それが、日本にプロサッカーが根付き多くの底辺が生まれている「証」だと私は思っています。
2:フロントについて
先日、日本代表にアギーレ監督が就任した際にも「ブラジルW杯の反省はできているのか!」といった意見が数多く寄せられました。しかし、今回のゴトビ監督解任時にそういった意見はすくない気がします。
ゴトビ監督で足りなかった、駄目だった点、よかった点は3年半あるわけですから 必ず存在するはずです。それが大榎新監督にすぐにフィードバックできなくても、その次や更に先に生かすべきクラブの財産だと思うのです。
企業などでの品質管理はPDCAサイクルは常識です。PDCAは「PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(評価)→ACT(改善)」です。今回でいえば「監督交代」という「ACT」が実施されました。しかし、その前段には「CHECK」があるはずです。そのCHECKは単に、当初選定した年間成績批准に対してというだけでなく、クラブチームとして運営した全てにおいて評価する対象とするべきです。
もし、今回のCHECKが成績だけで実施されたのであれば、この3年半は本当の「ムダ」に終わることでしょう。ぜひとも、ゴトビ監督のよかった点を継承しつつ、クラブとして前進してくれることを期待したいです。
3:大榎監督について
以前から次期監督の最有力候補ではありましたが、こういったタイミングでの就任になってしまったのはある意味残念です。
ただ、個人的にはこうも思うのです。今回の解任については、どちらかといえば単純な成績よりも外的要素が「押し出した」感があります。 これをやってしまうと次の監督も外的要因で「押し出し」ができてしまう悪い土壌がクラブに生まれます。
そういった意味では、クラブレジェンドの一人である大榎監督となり、その雰囲気をあたえない求心力をもたらしてくれるのではないかと期待しています。もちろん、クラブとしては最後の切り札を早くも使ってしまった訳です。ここからの数試合の出来によって、本当に後がなくなってしまう大きなリスクを抱えたという点は忘れてはなりません。
もちろんサポーターとして大榎監督の成功を願っていますが、クラブとして最低限のリスク管理を裏で進める必要がある点は忘れないでもらいたいと思っています。